⽇中の眠気や居眠りなどの症状はありますが、眠気はナルコレプシーと比較すると強くなく、なんとか我慢できる程度のことが多いです。
朝起きる時も昼寝から起きるときも、目覚めが悪い(爽快感がない)のが特徴です。一方で夜間睡眠は通常は正常で、PSGでは良質の睡眠がとれていると判定されます。情動脱力発作(体の力が抜ける)はみられません。また、頭痛、起立性低血圧、めまい、冷え性といった自律神経症状を伴う場合が多いです。

原因は?

「特発性」とは原因がわかっていないという意味です。目が覚めているときに覚醒中枢が働くと同時に、睡眠中枢の活動も継続していて、ぼんやりした状態が続くのではないかと考えられています。

検査・診断は?

特発性過眠症を積極的に診断できる特異的な指標がないため(特発性過眠症の眠気の特徴は例えば睡眠不足の時に生じるものと区別ができない)、眠気をきたすそれ以外の疾患を除外して診断することが必要になります。
睡眠の状態を調べるためには、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を⾏います。⼀泊⼆⽇で夜間の睡眠を測定します。⽬が覚めている状態から眠りに⼊るまでの時間(⼊眠潜時といいます)や睡眠の深さや質、睡眠の中断を引き起こす症状の有無などを調べます。
また、眠気の重症度を「寝付きやすさ」の視点から判定するために睡眠潜時反復検査(MSLT)を行います。現在の診断基準では、「寝付きやすさ」と別に病的眠気の判定法があり、制限なく眠った時の1日の総睡眠時間が11時間以上に延長することでも診断できます。

治療は?

特発性過眠症の治療では、ライフスタイルの改善と薬物療法を組み合わせて行います。
睡眠時間が遷延する典型的な特発性過眠症の方は、夜型になりやすい特徴があります。ライフスタイルの改善ができると、症状が少し改善する可能性があります。
薬物療法では、メラトニン作動薬や中枢神経刺激薬を用いることもあります。

ナルコレプシーと特発性過眠症の違いは?

ナルコレプシーと特発性過眠症は、同じ中枢性過眠症ですが眠りなどの症状に違いがあり、それぞれを診断する際の目安にもなっています。

1.昼間の眠りに関する違い

(1)眠りの性質

ナルコレプシー

・ちょっとした刺激でも簡単に目が覚めます。

特発性過眠症

・しっかり目が覚めるまで時間がかかります。

(2)眠りの強さ

ナルコレプシー

・耐え難い眠気に襲われます。食事や会話中などに眠り込むことがあります。

・眠気を感じる前に眠り込むことがあります(睡眠発作といいます)。

特発性過眠症

・繰り返す眠気に襲われることはあるものの、眠り込むのを何とか我慢できる程度の眠気であることが多くなっています。

(3)居眠りの持続時間

ナルコレプシー

・30分以内(5~20分程度のことが多いようです)

特発性過眠症

・1時間以上(3~4時間に及ぶことも多いようです)

(4)⽬が覚めたときの気分

ナルコレプシー

・スッキリとした爽快感を伴うことが多いようです。

・一時的に目が覚めた感じはしますが、約2時間で再び眠気に襲われます。

特発性過眠症

・起きた時にはスッキリとした爽快感はありません。

・寝ぼけた状態が続くことがあります(睡眠酩酊といいます)。

2.夜間の睡眠に関する違い

ナルコレプシー

・ナルコレプシー発症後に一定期間を過ぎると、中途覚醒が頻繁に起こります。多くの場合、目覚めは良いです。

特発性過眠症

・夜間の睡眠の質は正常です。

・夜間の睡眠時間は正常か長くなります。多くの場合、起床が辛くなります。

3.合併症に関する違い

ナルコレプシー

・睡眠関連の合併症として、情動脱力発作(ナルコプレシータイプ1のみ)、入眠時幻覚、睡眠麻痺、夜間睡眠中に足がビクビク動く障害などがあります。

・睡眠以外の合併症として、肥満傾向が強い、肥満とは関係なく2型糖尿病を合併する頻度が高く、半数以上で多汗を伴うことなどが知られています。

特発性過眠症

・睡眠関連の合併症として、夜型になりやすいことが挙げられます。

・睡眠以外の合併症として、頭痛、起立性低血圧、めまい、体温調節の異常(四肢末端の冷感)などが多くなっています。